デザインの世界の格言「制約が創造性を育む」のケーススタディ



デザインの世界で昔からある格言の1つに「制約が創造性を育む」というものがあります。
私も前職のDTPデザイナーの頃に、本で読んで知りました。
ただ残念ながら、このことを実感する機会はこれまでありませんでした。

ところが最近、この格言の効用を作家活動の中で経験することができましたので、今回はそのことをケーススタディとして提示致します。

ケーススタディ:NEW JAPAN PHOTO EXTENDED EDITIONの作品カタログ

それは以前に記事にしたNEW JAPAN PHOTO EXTENDED EDITIONの作品カタログに掲載される作品をセレクトしていた時に実感しました。

このカタログは1人の写真家の作品を8ページにわたって掲載するものですが、紙面のフォーマットが厳密に決まっており、1ページにつき作品は1点、最初のページに作品とともにプロフィールやコンセプトを掲載するというものでした。
しかしこのフォーマットが私を悩ませました。

なぜなら近年の私の作品は、造形的な魅力の追求よりもコンセプトの具現化を主眼としているため、そのコンセプトを提示できないことには作品を掲載していただいてもあまり意味がありません。
しかしそのコンセプトは最初のページにしか掲載できないため、必然的に掲載していただく作品は1つのコンセプトに基づいた一連の作品にならざるを得ません。
しかもそれは8点以上のボリュームのある作品群でなければなりません。

これらの条件を満たす作品は、今年の9月にACTで開催した個展「こだわりの果て…」で展示した、一連の展示(設置)作業の作業者のみを写したモノクロ写真と、同じ作業の道具のみを写したカラー写真の2つのみでした。

田尻健二 個展「こだわりの果て…」左壁面作品

左壁面作品

田尻健二 個展「こだわりの果て…」右壁面作品

右壁面作品

そこでどちらの作品群にしようかと考えていた時に、不意に見開きで作品が掲載されるのだから同じ作業場面を異なる方法で撮影した作品を対にして4場面掲載するというアイディアが閃きました。
そしてこのアイディアに基づき、同じ作業場面であることを明確化するために人物写真の方を撮影時のカラーに戻して作品化し直しました。
こうして完成したのが、下の写真にあるような体裁の紙面です。

NEW JAPAN PHOTO EXTENDED EDITIONのカタログ 作品掲載ページ

もっとも一旦閃いてしまえば何の事は無いアイディアかもしれませんが、少なくても先の個展の時には一連の作業を連続写真で示すことしか念頭になかったため、今回のようなアイディアを思いつくことはありませんでした。
ですから私とってこのアイディアは、前述の制約とともに、カタログという本の体裁によって初めて生み出されたものだったのです。

アイディアの捻出には得てしてこういう灯台下暗し的な要素がつきものですが、それを制約が時には新たな視点をもたらす働きを担ってくれることがあります。

デザインの仕事では、さらに困難な制約をクリアしなければならないことが多々あるのですが、今回は制約が新たなアイディアを生み出すきっかけとなるケースとして提示致しました。