コバヤシ画廊「新世代への視点2016 村上早展」感想~現実感覚を揺さぶられる展示



今日、新世代への視点2016の展示を幾つか見てきました。
なかでも一番印象に残ったのはコバヤシ画廊の村上早展でした。
村上さんは以前に「絵画のゆくえ2016 FACE受賞作家展」の感想を書いたこともある方で今回も楽しみにしていましたが、期待通りの素晴らしい展示でした。

「新世代への視点2016 村上早展」感想

幼少期の魔術的な記憶の断片

今回は前回書いた感想のことをすっかり忘れてしまっていたためもあってか、別のことを感じました。

新世代への視点2016 村上早展 展示写真1

こちらは入ってすぐ右側に展示されている作品群です。
前回の「絵画のゆくえ」のステートメントによれば、村上さんの作品は幼少期の記憶がモチーフとなっているようですが、それにしてはとても奇妙な光景です。
当事者の村上さんでなければ分からないような、部外者には何の場面なのかまったく想像もつかない光景の数々です。

これらの作品を見ていて、いつも現実と夢の間を彷徨うように奇妙な空想ばかりしていた子どもの頃の自分のことが思い出され、さらにそれでも理解が進まないままなので、これらの光景は特定の場面というよりも複数の場面の組み合わせのように思えてきました。
つまり記憶の断片の集合体のようなイメージです。

ちなみに発達心理学の知見によれば、自我がまだしっかりと形成されていない幼少期の子どもは、この世に不可能なことは何もないというような万能感に溢れ、そのある種恐ろしい様を、ある発達心理学者は魔術的と称しました。
空想には現実では成しえないことをいとも簡単に行ってしまう魔法のような力があり、私自身その魔力の虜になってしまった一人ですが、ときおり子どもならではの残虐性が顔を覗かせる村上さんの作品からも、同じような魔力を感じました。

個人的な心理と集合的要素の饗宴

新世代への視点2016 村上早展 展示写真2

続いてこちらの作品群のように、村上さんの作品にはクマのようなウシのような、あるいはイヌのような動物もよく登場します。
これらの動物はよく神話で聖なる動物として登場します。
例えばミトラ教はまさにウシを崇拝する宗教でしたし、古代エジプトの壁画にはイヌの頭を持つ神が頻繁に登場します。またクマは特にシベリアなどの寒冷地において聖なる動物とされています。

このため、これらの作品群を見ていると、先ほどの作品群とは異なり、個人の心理を超えた集合的要素の力を感じ、それらの力と村上さんの心との饗宴を見ているような感覚を味わいました。

現実感覚を揺さぶられる展示

だた改めて展示を振り返ってみますと、集合的な要素を感じる一方で、もしかしたらこれは動物と実際に戯れている村上さんの記憶を描いたもののようにも思えて来て、しかしそれも実は空想上での戯れなのではないかとも思え…
というように「現実と空想」「個人と社会」といった区別がどんどん曖昧になってくる、現実感覚を揺さぶられる展示で、それこそが村上さんの作品の魅力ような気がします。
単に幻想的ではないのです。

展示は8月6日(土)までですので是非ご覧ください。

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